〝地元、同業者のための飯屋を!〟毎日食べても飽きない、通いたいと愛され続ける人気中華料理店

今回、ご紹介するのは東京都武蔵野市の人気店「中華街 吉祥寺本店」です。吉祥寺駅東口を右手に進み徒歩1〜2分ほどという好立地ながら、昼間は静かな「みその通り」沿いにお店はあります。
オープンから約25年間、地元のお客さまを中心に慕われている同店は、豊富でユニークなメニューがメディアで取り上げられることも多く、「あ、ここテレビで見た」と思う方も多いかもしれません。
日本で中華料理といえば定番・人気メニューの「海老チリ」「酢豚」は実は「好きではない」と話す社長の洪さんに、お店が人気の理由、そして味へのこだわりなどを伺ってきました。

路地を一本入ると現れる吉祥寺の〝中華街〟

お話を伺った方/洪流さん

「来日した当初、吉祥寺で飲食店のアルバイトをしていました。でも、当時の吉祥寺は本格的な中華料理の店が少なかった。だから、日本の友だちに本場の味を紹介するため、横浜中華街を案内していた」と話す洪さん。友だちが増えるにつれ案内する回数が月に3回、4回と増えていき、休みのたびに義務でもないのに中華街ツアーを行っていたとのこと。結婚されたことも重なり「それなら地元(吉祥寺)に中華街を呼べばいいじゃないか」と、そんな思いでお店を開いたそうです。
オープンから変わらない同店のすごさのひとつは、午前11時から翌8時までという長い営業時間と、さらに無休であるということ。これは洪さんが飲食店に勤めていた経験から、「深夜、営業が終わってからだと飲食従事者が食事できる店がほとんどない」という悩みを解決するために生まれたアイデアです。
ファミレスや深夜営業のチェーン店が少なかった当時、朝までの営業スタイルは大当たり。営業を終えた飲食店のスタッフやお店のアフターで訪れる常連客とオーナー、マスターなどで連日賑わい、一躍、吉祥寺にならなくてはならないお店へと発展します。

豊富なメニューには洪さんのコメントが添えられている

飲んだ締めにラーメンを食べに訪れたり、営業終わりの飲食店同業者が明け方に食事に訪れたり、まだまだ飲みたりない左党(酒好きな人)たちがおつまみとお酒を楽しんだりする一方、ランチ時しっかりお腹を満たしたい方も訪れるようになると、いつ食べても「飽きない」工夫が必要になりメニュー数も増えていったそうです。

一般に中華料理というと中華鍋から聞こえるジャジャッという炒める音や油通しなど、とにかく油をたっぷり使うイメージですが、洪さんは「それは誤解」と言います。
「油で炒める料理や揚げ物を毎日食べ続けられる人は、そういません。中国人が毎日食べている料理も、実はそこまで油を使っているわけではないんです。だから、私の店でも油は最小限度にとどめ、しつこくない、胃にもたれない、毎日食べても飽きない味を提供しています」。

他店ではオイリーになりがちな揚げた肉をタレに絡める酢豚も「中華街 吉祥寺本店」では火力と調理技術を駆使し、油は少なく最後の仕上げに香りづけとツヤ出しのネギ油を加えることで食べ疲れしない味に仕上げています。記者もランチに酢豚を食べたことがありますが、玉ねぎ、ピーマンはシャキシャキで大ぶりの豚肉がゴロゴロと入っていてボリューム満点。でも油のくどさがなく、最後まで美味しくいただきました。ごはんとスープ、お漬物(この時は山芋でした)がついて990円という価格もリーズナブルだと思います。

こんなに美味しいのに、なぜ酢豚は「好きではない」のか洪さんに聞いてみると、「いまは冷凍や流通がよくなりましたが、昔は質や鮮度の落ちた肉や海鮮が売られていることもあったんです。だから、濃い味つけでごまかすような酢豚や海老チリなんかを出す店もあった。酢豚も海老チリも人気のあるメニューですが、今は素材の鮮度も質もいいので、もっとシンプルな味付けで美味しい料理があることを知ってもらいたい」とのこと。メニューを見ると、「海老アスパラ」「車海老ニンニク蒸し」「海老玉子」など、海老料理だけでも気になるものがたくさんありました。

ランチで提供される酢豚定食(990円)
ランチのスープ。ふわふわ卵のスープもやさしい味わい

このほか常時150種類ほどのメニューには点心、前菜、一品料理、麺、ご飯もの、スープ、デザートと家族連れでも、宴会でも、少人数でも、どんなお客さまにも対応できるメニューがずらりと並んでいます。
特筆すべきは点心です。都内でも珍しい点心師が腕をふるっている餃子や小籠包、饅頭……と、点心・飲茶好きにはたまらない、飲茶専門店顔負けのメニューの数々。こちらも使用する油や調味料を抑え、そのまま食べて美味しい味に仕上げているという洪さん。
大ぶりの餃子は醤油やラー油を使わずとも、一口で頬張ればジュワッと肉汁があふれ、口の中に旨みが広がっていく一品です。皮もモチモチ。そしてアツアツの餃子をホフホフと頬張ったあとゴクっと飲むビールやサワーの美味しいこと!

餡にしっかり味のついた餃子はビールやサワーの最強のコンビ

続いて紹介したいのは、鶏の足(もみじ)料理「鳳爪(フォンジャーウ)」です。日本人には見慣れないメニューかもしれませんが、広東料理や香港飲茶では定番で、記者も大好きな点心なんですが、日本でなかなか美味しい鳳爪に出会ったことがありません。「うちのは丁寧に作っているから美味しいよ」とお店でもおすすめの一品です。
下処理が丁寧なのでしょう、余計な臭みなどいっさいなく、蒸籠からの香りだけでも美味しさが伝わってきます。鶏の皮はやわらかく、しっかり味の染み込んだお肉はスルッと骨から剥がれ、甘みと中国スパイスのバランスが最高でした。

コラーゲンたっぷり!トロリとした〝鳳爪〟は記者おすすめの一皿

ランチならば一人でも楽しめる中華ですが、お酒とともに食べたいとき、少人数のときのメニュー選びに悩む方も多いのではないでしょうか。中華の醍醐味として、お店で食べるのがいちばん美味しいのですが、おひとりさまや、おうち飲み派の方は汁ものの麺以外はテイクアウトも可能です。

味へのこだわりが書かれた箸袋
店頭にずらりと並ぶメニュー。あれも、これも食べたいと悩むこと必至

今回の取材での後悔はただひとつ。一人で来店したことです。次はせめて2人、できれば4人以上で、数あるメニューを食べてみたい!と思い、自宅飲み用に「豚舌煮込み」「香港風蒸鳥」そして洪さんも大好きだという「砂肝ネギあえ」をテイクアウトしました。

自宅に持ち帰った砂肝ネギあえ

帰宅後、お持ち帰りしたメニューをいただきましたが、ほんのりとした甘みとしっとりした食感の「豚舌煮込み」も、プリプリの鶏もも肉にたっぷりのネギ、生姜だれがかかった「香港風蒸鳥」も、シャキシャキ、コリコリとした食感が楽しい「砂肝ネギあえ」も、どれもとても美味しかったです。

今回、ご紹介した「中華街」ですが、お話しを伺った洪さんは、ふだん武蔵境店(こちらも駅近の店舗です)にいらっしゃるとのこと。吉祥寺店は明るく、元気の良い女将さんの接客に元気をもらえる店舗です。いずれも年中無休、お昼から朝まで通し営業をしていて、遅めのランチ、昼飲み、深夜の食事など、さまざまな使い方ができるので、武蔵野エリアで美味しい中華が食べたくなったらぜひ訪ねてみてください。

店舗情報

店名
中華街 吉祥寺本店
住所
〒180-0004

東京都武蔵野市吉祥寺1-31-13アサカビル1F

JR吉祥寺駅東口から徒歩1〜2分
最寄駅
吉祥寺駅
駐車場
電話
0422-21-3070
コロナ禍への対応
お店HP
http://www.chukagai-kichijoji.com/index.html

インタビュアー

加藤
日本

バンコクをはじめプーケット、サムイなど年に一度は渡泰するほどのタイ好きライター加藤です。 タイのほか、中国、台湾、ベトナム、インドネシア、韓国などアジアの食、文化に関心があります。 日本で味わえる母国の味や本場の味をお伝えできるよう、レポートしていきたいと思っています。