体を元気にするスリランカのアーユルヴェーダ料理店
今回ご紹介するのは、スリランカのアーユルヴェーダ料理店「ミリス」です。
八王子駅の北口を出たら左折して、みさき通りを直進します。野猿街道の交差点に来ると左手に「ミリス」の看板が見えます。
お話しを伺った方/インディカ・ニロシャンさん
「ミリス」のオーナー、インディカ・ニロシャンさんにお話を伺いました。インディカさんはアーユルヴェーダに関する造詣が深い方です。
―― まず、日本にいらっしゃった経緯を教えてください。
インディカさん: 以前は香港の貿易会社に勤めていました。取引先の日本人担当者は英語が苦手だったので、それなら自分が日本語を話せるようになろうと思って来日したんです。当初は2年ほど学んで戻る予定でしたが、結局そのまま残って、かれこれ18年住んでいます。
―― それで会社を辞めて、このお店をオープンされたのですね。店名にはどんな意味があるんですか?
インディカさん: 「ミリス」の意味は「唐辛子」です。響きが良くて覚えやすいので気に入っています。
店のロゴも自分で考えたんですよ。当店は今年で6周年を迎えるので記念にロゴ入りのコースターも作りました。
―― 6周年おめでとうございます。ロゴのデザイン、すごくいいですね。
もともとデザインするのが得意だったんですか?
インディカさん: そんなことはないのですが、人に頼むと思い描いていたイメージ通りにはならないですからね。だから看板作りや店の内装も自分でやりました。
―― 店内も雰囲気が良くて落ち着きますね。今に至るまで、大変なこともありましたか?
インディカさん: コロナの時は、やはり大変でしたね。移転する前は今より店の規模が大きかったのですが、緊急事態宣言を受けて、いったん閉店しました。もうやめようかと真剣に考えていた時に常連客から「やめないで」とメールが来て再出発することにしたんです。
―― それほど「ミリス」を必要としている方々がいらっしゃったのですね。
アーユルヴェーダ料理に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。
インディカさん: 実は母がアーユルヴェーダの医師で、豊富な経験と知識を持っていたんです。母が亡くなった時、もっといろいろと教わっておけばよかったと悔やみました。若い頃は、その価値をよく理解していなかったんですよね。でも母の法事のタイミングで、同じアーユルヴェーダ医師のモハン先生と出会って、本格的に学ぶことができました。母が先生と僕を引き合わせてくれたのかなと思っています。
―― お母様の影響が大きかったのですね。アーユルヴェーダ料理について、もう少し詳しく聞かせてください。
インディカさん: アーユルヴェーダはインドで発祥した伝統医療ですが、スリランカに伝わって独自に発展しました。ですからインドとスリランカのアーユルヴェーダは違います。スリランカの家庭料理はアーユルヴェーダそのものなんです。
まず台所を寺と捉え、母親が瞑想して手のエネルギーで愛情を込めて料理を作ります。
―― 料理作りが神聖な儀式のようですね。日本では大抵、忙しい母親が家族のために義務感で作っているような感じがします。
インディカさん: そこが違うんですよね。スリランカでは食材を生き物のように大切に扱います。それが母親の手の細胞を通して食材に伝わり、美味しくて体に良い料理になるんです。
―― 確かに、どういう思いで作ったかというのは大事ですよね。食材は、どんな物を使うんでしょうか。
インディカさん: スリランカの家庭料理は野菜中心で、余分な水や油を使わずに調理します。そうすることで素材本来の旨味が引き出されるんです。
―― 食材に感謝して、素材そのものを味わう。本当に体に良さそうですね。
頂いたスリランカプレートも、まさに“優しい味”でたくさん食べられそうでした。
インディカさん: スリランカプレートには新鮮な野菜の他に、バスマティライスというインディカ米を使っています。軽い食感でサラダにも合いますよ。
―― チーズナンとサモサも食感が良くて、すごく美味しかったです。他にお薦めはありますか?
インディカさん: これはスリランカ料理ではないのですが、竹炭を使った「デトックスカレー」もお薦めです。原発事故が起きたチェルノブイリで、ある女性が孫たちに炭を食べさせていたら癌になる子が少なかったという記事を見て、取り入れようと思ったんです。日本産の食用炭を使っているので安心ですよ。これを食べた翌日は、お腹がスッキリします。美味しいので他のカレーが食べられなくなったという熱烈なファンもいるほどです。
竹炭でカレーの風味が損なわれることはありませんし、歯が黒くなることもありません。
―― それは、ぜひとも食べてみたいですね。
インディカさん: 数量限定になってしまうんですが、時々シカやイノシシ肉を入れたカレーも出しています。
―― イノシシは臭みが強い印象がありますが。
インディカさん: スパイスを使って調理するので、臭みはほとんど気になりませんよ。「ほとんど」というのは、何の肉か分かるように敢えて少しだけ臭みを残すからです。
抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、成長促進剤などが使われていないので野生肉の方がよっぽど安全なんです。
―― そう言われてみれば、そうですね。アーユルヴェーダ、竹炭、ジビエなど珍しい料理が魅力的ですが、特にどういう人に来店してほしいと思いますか?
インディカさん: 病院で検査しても異常がないのに不調を感じている人ですね。健康状態は食事で改善できるので、ぜひ食べに来てください。また、ベジタリアンの方にも対応しています。
当店が運営しているスクールではアーユルヴェーダ料理の作り方を学ぶこともできますよ。
―― 最後に今後の目標を教えてください。
インディカさん: 本格的なアーユルヴェーダ専門店を作りたいです。
僕が今まで病気ひとつせずに元気で生きてこられたのも、母とアーユルヴェーダのお陰だと思っています。
このスリランカの叡智を日本の皆さんに伝えていきたいですね。
あとがき
インタビュー中、日本とスリランカの関係についても話が広がりました。
スリランカのジャヤワルダナ元大統領は、サンフランシスコ講和会議で日本を分割占領の危機から救ってくれた人です。 ブッダの言葉「憎しみは憎しみによってやまず、ただ愛によってのみやむ」を引用した彼の感動的な演説がなかったら、日本は4分割されてしまい、今のような生活は望めなかったでしょう。それ以来、日本企業や団体が恩返しとして支援などの活動を続けています。今も両国の友好関係は続いていますが、個人レベルでもスリランカから学ぶことはたくさんあると感じました。
スリランカは自然が豊かな美しい国です。 インディカさんはスリランカへのツアーも実施しているそうですよ。「ミリス」でアーユルヴェーダやスリランカの魅力に触れてみませんか。