吉祥寺の地下1階にある異国
ライターの茂田です。日本文化を学びながら海外に移住する準備を進めています。
気楽に海外に行けない状況が続いていますが、足元に目を向ければ、身近な街にも知らなかった魅力が沢山あることに気がつきました。
今回はジョージア料理とロシア料理が食べられる「カフェロシア」を紹介します。
店の紹介
お店の場所は吉祥寺です。
吉祥寺は「関東の住みたい街ランキング」で常に上位に選ばれている人気の街。駅の近くに個性的な飲食店や雑貨店が軒を連ねており、週末は地元民や遠方から訪れる多くの人々で賑わいます。
駅の北口を出て左方向に2分程歩くと、白壁の少し古びたビルの、地下に降りる階段に「Cafe RUSSIA」の看板が見えます。
オープンは2007年。カジュアルに入れて、本場の味を楽しめるお店を開きたい、という想いからスタートしました。
看板には「ロシアとグルジア料理」と書かれていますね。オープン当時、ジョージアは旧ソ連時代の名称であるグルジアと呼ばれていました。日本がグルジアをジョージアと呼ぶようになったのは2015年からです。
日本人が『これはロシア料理だ』と思っているものには、20世紀に日本に伝わる過程で材料や作り方が変わっているものが少なからずあります。
例えば、有名なロシア料理のボルシチ。本場はビーツを使って作るのですが、日本にはトマトを使ったスープとして伝わりました。極東ではビーツが手に入らなかったのでトマトで代用したことが由来とされています。
カフェロシアは、本場の作り方に忠実に料理を提供しています。ロシア人とジョージア人の方は、故郷の味をお楽しみに!日本人の方は、先入観を取り外して訪ねてください。
壁は鮮やかな赤紫色に彩られています。この色はロシア人が見たらビーツ、ジョージア人が見たらワインの色合いに感じるそうです。
店内に入るとロシア語を話す外国人のスタッフさんが働いています。料理を食べていると、流しの音楽グループが現れて、生演奏で哀愁漂う東欧諸国の民謡を聴かせてくれました。
俳優の松尾スズキさんがかつてこの店を訪れた際に、「なかなかな密度の異国情緒」と表現してましたが、なるほど、たしかにトリップ感満載です。
料理の紹介
メニューの種類が豊富で何を注文するか悩みます。お酒の種類もいろいろ。今回はジョージア料理を紹介するため、ジョージア料理のお試しセットとハルチョー、赤ワインを注文しました。ジョージア料理の特徴について簡単に触れておきましょう。
ジョージアはシルクロードの西端に位置する、日本の5分の1ほどの大きさの国です。東西に長く伸びるこの国は、北側はロシア、南はトルコとアルメニア、南東はアゼルバイジャンに接しています。東は黒海沿岸に達しており、東ヨーロッパとの交易が盛んです。
古い歴史を持つ土地で、ギリシャ、ローマ、ペルシャ、アラブ、モンゴル、トルコ、ロシアなど、近隣大国の支配や影響を受けてきました。そのため東洋と西洋の食文化が混じっていることがジョージア料理の特徴です。
地理的な特徴も見逃せません。ジョージアは小国ながら、その風土は実に多様です。そのため様々なハーブや果実が自生しており、「ワイン発祥の地」として8000年前からワインが作られてきました。
今日ではジョージア産のワイン、および伝統的な製法で作るクヴェヴリワインは、日本でも入手しやすくなっています。
ジョージア人はテーブルに様々な料理のお皿を並べ(テーブルに乗りきらない時はお皿を重ねることも!)、皆で宴会(スプラと呼ばれる)をする伝統を大切にしています。
今回は1人前のお料理を注文したのでスプラはできませんでしたが、3〜4人で訪問して数々の料理でテーブルを埋めつくしたら楽しいだろうな、と思いました。
前菜5品
イタリアンパセリが彩を添える前菜5品。料理は写真の9時の方向から時計回りに、
・毛皮のコートを着たニシン (ニシンとビーツとポテトのミルフィーユサラダ)
・パドゥラジャーニ (クルミペーストの入ったジョージアの焼きなす料理)
・バストゥルマ (スパイシーな辛さの干し肉)
・キャベツのマリネ (ビーツと一緒に漬けたジョージアのピクルス)
・アジャプサンダリ (ジョージアのスパイシーなラタトゥイユ)
どの料理もワインとの相性は抜群です。一番手前のアジャプサンダリにはインド系のスパイスが使われているためスパイシーではありますが、辛くはありません。
毛皮のコートを着たニシンは絶品でした。見た目の印象よりシンプルな味わいです。料理名が面白いですね。ミルフィーユの下層に敷き詰めたニシンが厚手のコートを着ているように見えることから、この名前が付けられました。
ハチャプリ
ハチャプリはジョージアを代表するパン料理であり地方によって様々な形が存在します。
カフェロシアのハチャプリは、円形のパンの中に溶けたチーズが入っていて、これだけでも十分に味わい深い一品です。
ジョージアはパン天国と言えるほどパンの種類が豊富なので、パン好きなら一度は訪れてみたい国です。
タバカ
タバカはハーブを発酵させたソースでマリネしたひな鳥をオーブンで焼いて作る、ジョージアを代表する料理です。
ジョージアでは家庭でニワトリを飼っていることが多く、ふだんは肉をあまり食べませんが、特別な場面では肉料理を振る舞います。
表面はパリッとして中はジューシーなチキンを頂いていると、贅沢な気分になりました。
ハルチョー
ハルチョーは、7種類のスパイスで牛肉を煮込んだジョージアを代表するスープです。お米も入っていて優しい味わい。体に良さそう。
激辛なスープとメニューに書かれていますが、先に前菜のバストゥルマを食べて舌が痺れていたからでしょうか、ハルチョーは辛く感じませんでした。「とにかく優しい」この一言に尽きます。
ジョージアの珈琲
食後にジョージアの珈琲をいただきました。苦い珈琲をイメージしていましたが、飲んだ瞬間、その甘さにビックリ!
ジョージア珈琲の淹れ方はトルコ珈琲と同じで、細かく挽いた豆を多めの砂糖と一緒に煮だし、濾さずにカップにそのまま注ぎます。砂糖は珈琲の粉と同量加えているので、甘いのです。
最後にカップの底に溜まった粉で珈琲占いをしました。ソーサーの上でカップをひっくり返し、3分後、粉の模様が何に見えるか眺めます。ハリー・ポッターのトレローニー先生の占い学に茶葉を使って占う場面が出てきますが、あれの珈琲バージョンです。
この日の黒い模様から連想したのは猫でした。占いの結果は・・・
→【猫】言い争いで時間を浪費する。ただし短時間。
参考:
BRUTUS/2020年2月15日号(マガジンハウス) 松尾スズキ連載「ニホン世界一周メシ」
「ジョージアのクヴェヴリワインと食文化」(誠文堂新光社)島村菜津、他