Bonjour de Hoya! 老若男女に愛される本場のカヌレ

お話を伺った方/フィリップ・シモンさん

 フランス・ボルドー地方の伝統菓子「カヌレ」。今回ご紹介するのは、フランス産100%の小麦粉、サトウキビ、ネグリータ社の最高級ラム酒など素材にこだわった本場のカヌレを提供している「アトリエ モンカヌレ」さん。フランス人のフィリップ・シモンさんと奥さまの寛子さんが、西東京市にお店をオープンして以来、地元のお客さまだけでなく、遠方のお客さまにも愛されているお店です。
 西武池袋線の保谷駅南口から7分ほど道なりに歩くと、フランスワインをイメージさせるボルドー色のテントとフランス国旗が飾られたお店にたどり着きます。扉を開けると、そこは小さなフランス。かわいいショーケースのなかにはアクセサリーのようにカヌレや焼き菓子が並んでいます。

看板メニューのカヌレ

 店内ではカヌレや焼き菓子を購入するだけでなく、ガラスのテーブルと白いラタンの椅子のカフェスペースでお店自慢のカヌレとコーヒー、紅茶、ジュースなどをいただくことができます。
 もともと打ちっぱなしのコンクリートだったという壁や床はフィリップさんご自身の手で塗装をされたとのこと。やさしいピンクの壁が印象的です。アンティーク家具の上に飾られている絵画やフランスの雑貨、ガラス窓から入る柔らかな光が、まるでフィリップさんのおうちに招かれたような温かな時間を演出してくれます。

ショーケースに並ぶお菓子
絵画や額が並ぶ店内

 カヌレと2種の焼き菓子が楽しめる「モンカヌレセット」(760円)を注文すると、ほどなくコーヒーの良い香りが漂ってきました。カフェタイムを楽しみながら店主のフィリップさんにお話を伺ってみましょう。

フランスの雰囲気が伝わってくるメニュー

 パリッとした表面と、プリンのようなしっとりとした生地で食感のコントラストを楽しめるカヌレ。芳醇なラムの香りがふわりと鼻に抜けます。


「カヌレはシンプルなお菓子ですが、表面がカリカリと固すぎるものや、生地がゴムのような食感のものを出すお店もあります。うちでは、パリッとした表面と生地のしっとり感が楽しめるよう温度管理や焼き時間にこだわっています。ラム酒を贅沢に使っていますが、香りだけを残してアルコール分は飛んでいるので、お子さんにも安心して食べていただけますよ。」

 こだわりはカヌレの大きさにもあります。

「カヌレは一般的に3種類の大きさがありますが、当店ではカヌレクラシックのみを取り扱っています。もともと、カヌレのサイズはクラシックのみでしたが、最近ではレストランでデザートの小菓子に小さなカヌレが出てくることもありますね。カヌレは食感がたいせつなお菓子なので、クラシックサイズがいちばんテクスチャーの違いや、食べ応えを味わえると思います。」

 2種の焼き菓子は、アーモンドが香るふんわり食感の「アマレッティ」と、ココナッツをたっぷりと使った「ロシェ・ココ」。いずれも小麦粉や牛乳は使わないグルテンフリーのスイーツです。ココナッツの食感が楽しいロシェ・ココは、ほんのりとレモンの香りが感じられます。フィリップさんのお菓子はどれも甘すぎず、やさしい味わいが特徴です。

「白砂糖ではなくサトウキビを使用し、丸みのある甘さに仕上げています。強い甘みは、素材の風味を消してしまうので、私は甘すぎるお菓子が好きじゃないんです。」

 安心・安全な食材と上品な甘さは、年齢問わず好まれそうです。今日はコーヒーと合わせましたが、紅茶はもちろん日本茶にも合うと感じました。

モンカヌレセット

「カヌレは赤ワイン。アマレッティはシャンパン、ロシェ・ココはフルーツともよく合います。お店でも冬はホットワイン、夏はラム酒の入ったフルーツポンチなどをお出ししています。フランスでは朝食にカヌレとコーヒーやカフェオレ、食事のあとアイスを添えたカヌレをデザートになど、さまざまな楽しみ方をするんですね。」

 カヌレの楽しみ方やドリンクとのペアリングを教えていただきました。自宅用にテイクアウトしたカヌレはワインとともに楽しんでみようと思います。
 カヌレは単品で1個320円、アマレッティとロシェ・ココはそれぞれ5個入り450円でテイクアウトができます。

訪問したときは、夏ならでは「フルーツポンチ」のポスターが

 日本でフランスの味をつくり続けるフィリップさんですが、フランスではメトロの運転士を務めていたとのこと。フランスに留学経験のある奥さまの寛子さんとは、趣味のサルサを通じて出会ったと言います。結婚後、9年ほどフランスで暮らしていましたが、フィリップさんのご両親が亡くなったこと、パリで大規模なテロがあったことから家族の大切さを実感します。そこで寛子さんのご家族が住む日本で暮らすことを決めたそうです。
 もともと甘すぎるものが苦手なフィリップさんにとって、カヌレは数少ないお気に入りのお菓子でした。

「これまで独学でつくっていたカヌレを、来日してホームパーティや手土産として持っていくうちに、カヌレを買いたいというリクエストが増えたんです。そこでお店を出すことに決めました。」

カヌレのイラストが描かれたボルドーのテント

 奥さまのご実家からも遠くない吉祥寺の不動産屋さんに紹介されたのが、現在の店舗。大家さんの人柄や駅から離れていないこともあり、この場所に出店を決めました。フィリップさんご夫妻にとって、保谷は緑が多く、心やさしいお客さまが集まる土地とのこと。常連さんはもちろん、フィリップさんとのおしゃべりを楽しみに来店される在日のフランス人も多いそうです。

存在感のあるフィリップさんのおじいさま譲りのノルマンディ製タンス


 多くの方々に愛されているフィリップさんのカヌレ。お店ではお菓子だけでなくワインやチーズのイベントを通し、フランス文化、ライフスタイルも紹介しています。
 フランスの伝統菓子、文化に触れたい方はぜひお店に足を運んでみてはいかがでしょうか。

さまざまな食感が楽しめるクラシックサイズのカヌレ

店舗情報

店名
アトリエ モンカヌレ(Atelier Mon Canel)
住所
〒202-0012

東京都西東京市東町1-6-6 
ビューラー東町 1F
西武池袋線「保谷駅」 南口から徒歩7分
最寄駅
保谷駅
駐車場
なし
電話
080-7530-6071
コロナ禍への対応
お店HP
https://www.ateliermoncanele.com/
グルメサイト掲載

インタビュアー

加藤
日本

バンコクをはじめプーケット、サムイなど年に一度は渡泰するほどのタイ好きライター加藤です。 タイのほか、中国、台湾、ベトナム、インドネシア、韓国などアジアの食、文化に関心があります。 日本で味わえる母国の味や本場の味をお伝えできるよう、レポートしていきたいと思っています。