人生は一度きり! スーパーポジティブなオーナーが経営するオリジナルのフィリピン料理店
立川市若葉町にあるKamayan’s (カマヤン)は、開店して今年で13年目になるフィリピン料理店です。
西武新宿線の東大和市駅から歩いて約12分。東京都薬用植物園を通り過ぎて村山街道から立川通りをまっすぐ歩くと左手にあります。
または東大和市駅か立川駅からバスに乗って小川橋で下車すると、すぐにお店の黄色い看板が見えてきます。
店内はカウンター席とテーブル席の洗練された雰囲気で、スタッフさんが笑顔で迎えてくれます。
お話を伺った方/コーニー・アルセガさん
今回、お話を聞かせてくださったのは、オーナーのコーニー・アルセガさんです。
ーまず、日本にいらしたきっかけを教えてください。
私は母が苦労している姿をずっと見ながら育ちました。だから楽をさせてあげたくて日本で働こうと決めたんです。
母は元料理人で、エンパナダ(具を包んで揚げた半月形のパイ)を作っていました。フィリピンの地元では美味しいと評判だったんですよ。
―ではコーニーさんも、お母様の影響でお料理上手だったんですね?
いえいえ。子供の頃から舌は肥えていたのですが、もっぱら食べる担当でした(笑)。
でも30代で料理に興味が湧いて、「こうしたら美味しくなるかな?」と作るようになったんです。
―立川市若葉町のこの場所にお店を構えたのは、何か理由があったんですか?
まったくの偶然なんですが、たまたま乗っていたバスが店の真正面に止まったんです。その時に「空き店舗」と書かれていたので遊び心で電話番号をメモしました。
それで下見も軽い気持ちで行ったのですが、中に入った瞬間に「これだ!」と思いましたね。どんな店にするのか、ありありとイメージできたんです。
―お店の内装がステキですね。
フランスに旅行したときに入った店が、モノトーンを基調にしていて印象的だったんです。その店を思い浮かべながら、飾り付けも全て自分でやりました。
―立地条件に対する周りの反応は、どうでしたか?
駅から少し離れているので、友人たちは心配だったようです。でも多少不便でも料理が美味しければ、お客さんは必ず来てくれると確信していたので迷いはありませんでした。
―それほど味に自信があったということですね。
以前、来店した団体客の1人が「フィリピン料理ってマズいんだよ」と文句を言っていたんです。でも時間が経つにつれて「あれ?フィリピン料理って、こんなに美味しいんだっけ?」と驚いていました。
―すごい。その人が持っていたフィリピン料理のイメージを覆しましたね!
うちの店は炒め物用の油も手作りなんです。デザートのアイスやプリンも自家製ですよ。独自の味付けをしていますので他店とは味が違います。
食材の質と新鮮さも、とても厳しくチェックしているんです。例えば仕入れた肉がいつもより質が悪ければ、すぐに突き返します。料理はメニューの写真と同じ物を出しますので、実物と違うなんてこともありません。
それに注文を受けてから作りますので、いつも出来立てを食べられますよ。
―バナナの葉っぱに包まれた料理は珍しいですね。
これはフィリピンのお弁当なんです。葉っぱを開くと肉やライスが出てきます。それを混ぜて手でいただくのがフィリピン流です。店名の「カマヤン」は「手で食べる」という意味なんです。
―どの料理も、すごく美味しそうです。
失敗から生まれた料理もあるんですよ。クリスピィ・テンガ・ナン・ボバイ(豚耳の素揚げ)は、本当は柔らかく仕上げるつもりだったのにカリカリになってしまいました。
でも「失敗した」と落胆していたら意外にもお客さんには好評で、いつの間にか人気メニューになっています。
―面白いですね。お料理以外で工夫されていることはありますか?
うちの店のメニューを見てください。料理の名前と写真だけで、説明は入れていないですよね。
でも、これはわざとなんです。
―出てきてからのお楽しみとか?
説明がないと、お客さんは「これは何ですか?」と聞きたくなるでしょう? そうすれば会話が生まれるんですよ。今の社会は人間同士のコミュニケーションがとても希薄だと感じています。心で通じ合うのはとても大切なことです。
あとは常に店の経営者としてではなく、お客さんの立場で考えるようにしています。「自分が客なら何を望むのか」という視点に立つと、自ずと必要なことが見えてきますからね。
―毎日お客さんが多くて忙しそうなので、休む暇がないのでは?
土日もオープンしていますが、年に1回だけ10日間の休みを取っています。スタッフに行き先の希望を聞いてボーナス代わりに海外旅行に連れていくんです。ドバイ、モロッコ、香港、フランスなど、いろんな所に行きましたよ。2人の有能なスタッフは、私の親友でもある大事な存在です。
―旅行ですか。いいですね。心身ともにリフレッシュできそうです。
仕事は妥協せず真剣にやっていますが、楽しむ心も忘れていません。仕事は遊び半分という気持ちでやっています。人生は一度きりなので楽しまないとダメなんです。
―その気持ち、大事ですよね。今後の抱負は、ありますか?
今がとても満足なので特にないです。子供の頃からの夢は、母に家と車を買ってあげて旅行に連れていくことでした。それも全て叶えましたね。これからも仕事と人生を楽しみたいです。
あとがき
プロ意識が強くて前向きなコーニーさんのお話はとても興味深く、自分の生き方まで考えさせられました。彼女と話すのが目的で通っている常連さんがいるというのも納得です。
ちょっと心が疲れた時は美味しいフィリピン料理を食べながら、コーニーさんとスタッフさんたちから元気をもらってはいかがでしょうか。