家庭的で素朴なポルトガル料理で「やさしい時間」を
皆さん、はじめまして。東京都下在住のライター、黒田侑(くろだ ゆう)と申します。昔から食べることも作ることも大好きで、友達と珍しい外国料理を食べてまわったり、イタリアンレストランのキッチンで働いたりしてきました。
都心には多く見られる外国料理店ですが、今日は東京23区外のおいしいお店についてご紹介したいと思います。
各国の雰囲気を味わいながら、楽しい時間を過ごすお手伝いができれば幸いです。
店の紹介
今回お邪魔したのはポルトガル料理とワインのお店「アルヴォリーニ」。小田急線町田駅から徒歩3分ほどの距離にあります。シックな看板が、このお店の目印ですよ。
2020年にオープンしたこちらのお店ですが、ビルの地下階にあり、外観からだと中の雰囲気はわかりません。
どこかミステリアスな雰囲気に緊張しつつも、ランチタイムのメニューに心を奪われます。
ポルトガル料理の定番らしいメニュー名が並び、見慣れない単語にはていねいに解説が添えてありました。
お店は地下にあります。タイル張りの壁を眺めつつ、階段を下りていくと……すぐにお店の入り口が。こじんまりとしつつも清潔で、あたたかな明かりが印象的です。
席数はそこまで多くないものの、隠れ家的な雰囲気を感じさせるお店ではないでしょうか。1人でランチに訪れる人が多く、それぞれ本を読んだり簡単な書き物をしたりと、リラックスして過ごしているのが印象的でした。
接客してくださったのは、店員でもあるこちらのお店の奥様。おすすめだという限定5食の「ポルトガルランチ」を選択しました。ランチセットはそこまで量が多くはないものの、デザートまで食べきればしっかり満腹になるくらいです、とお話しいただきました。
お店で扱うのはすべてポルトガルワイン、こちらのお店のおすすめポイントでもあります。ならば頼まないわけにはいかないと、グラスワインの赤も注文しました。
物腰のやわらかで気遣い屋の奥様です。空調も気にかけ、やさしく案内してくださいました。
料理の紹介
ポルトガルワイン
ポルトガルランチは白も赤も合うため、お好みの方で……とお勧めいただき、赤を。ベリーの香りが華やかで、渋みもしっかりと感じる味でした。ランチの煮込みにぴったりの味です。
バカリャウとひよこ豆のサラダ
バカリャウはポルトガルの料理には欠かせない食材の「塩漬けの干し鱈」です。たっぷりのひよこ豆と干し鱈のうま味が印象的なサラダでした。パクチーが使われているので、酸味のあるドレッシングと相まってさわやかなインパクトがあります。
バケットとフェジョアーダ
フェジョアーダは豚肉とうずら豆の煮込みです。
ポルトガルのフェジョアーダはトマト味がベースで、他に人参やたまねぎも。このほろほろ、プルプルに煮込まれた豚肉が絶品です。陶器の器で、最後まであつあつのまま食べることができますよ。添えてあるバケットもあたためられていて、サックリ歯切れがいいものです。
ワインにたまらなく合う一品でした。
バカリャウグラタン
こちらがメインとなるバカリャウグラタン。
先ほどもご紹介した干し鱈と、じゃがいもをたっぷり使ったグラタンです。にんにくとチーズの香ばしい香りと、濃厚な味わい。こちらも最後まであつあつのままいただきました。干し鱈は素朴なようでいて、ぐっとうま味が凝縮されています。
ポルトガルプリン
こちらはオレンジ風味のカラメルソースのかかったプリンです。
プリン自体はクリーミーで濃厚なものなのですが、カラメルソースの味わいで別のデザートのようです。オレンジとカラメルのほろ苦さがしっかりと味わえ、品のいいおしゃれなスイーツに。プリンに香りづけをするのも、ポルトガルの特徴です。
セットでドリンクもついてくるので、ホットコーヒーをいただきました。限定5食というこちらのランチセットは2,200円、落ち着いた店内でいただくご褒美感のあるランチだといえるでしょう。
常連さんの姿も見受けられ、「いつもの」といった形で1,100円からいただける日替わりの「アローシュランチ」を皆さん頼んでいるようでした。アローシュとは、ポルトガル料理のリゾットのこと。イタリア料理のそれとは作り方もまったく違うものらしいのですが、食べやすく大人気な様子。日本の雑炊のような作り方だと聞いて、そちらも今度いただいてみたいと思いました。
ご主人は、都内のポルトガル料理のお店でシェフをされていて、その素朴さや味わいに惹かれ町田にこのお店をオープンしたとのこと。ご夫婦でやっておられる「アルヴォリーニ」は、お2人のこまやかな気遣いやお料理へのこだわりが詰まった素敵なお店でした。やさしい接客と落ち着いた雰囲気に、こちらもお料理のひと皿ひと皿をじっくり味わいたい……そんな気持ちにさせられます。
ランチメニューは「アローシュランチ」「アルヴォリーニランチ」「ポルトガルランチ」の3種類のみですが、ディナータイムに訪れればさらに多彩なポルトガル料理が楽しめます。こちらのお店のワインはすべてポルトガルワインで、甘口ワインとして有名なポートワインももちろん取り扱っていますよ。
素敵な自分になりたいとき、誰かと特別な食事をするとき、ほんの少しだけ背筋を伸ばして訪れたいお店でした。