オールドアメリカンな空間で、こだわりのチーズを使った本格ニューヨークピザを！

こんにちは！フリーライターの吉田真琴です。食べることがとにかく大好きで、1年に300軒ほど外食をします。週末にはおいしいごはん屋さん探しに奔走しています。

お店の紹介

今回紹介するのは、吉祥寺駅南口（公園口）から徒歩4分、京王井の頭線の線路沿いに位置する『TONY’S PIZZA』。

2023年10月で創業55年を迎えた老舗のピザハウスで、風情のある喫茶店のような外観、赤い看板が目印です。

店内に入って目に飛び込んでくるのは、壁一面に飾られた海外のナンバープレートとヴィンテージ看板、そして、ジョン・F・ケネディ大統領の写真。

オールドアメリカンミュージックが流れ、歴史の針が戻ったような空間は、温かみと懐かしさを感じさせます。

カウンターとテーブル席で最大30席で、ソファ席もありゆったりと寛げます。

TONY’S PIZZAのマスター・藤原亀吉さんにお話を伺いました。

ー店内にもケネディの写真がありますが、元々アメリカの政治に興味があって渡米したそうですね。

藤原さん：はい、ニューヨークへはケネディに憧れて行ったんです。当時はお金がありませんでしたから、片道切符で人が乗れる最後の貨物船で、横浜港から約2週間かけてアメリカに。政治学を志してメッセンジャーボーイをしていました。

ーピザ職人に転向したきっかけは何だったのでしょう？

藤原さん：ケネディが暗殺されて、このまま政治学を続けるべきか考えたんです。家が貧しかったので、何か母を助けられる道の方が良いんじゃないかと。そこでふと浮かんだのが、当時住んでいたアパートの1階にあった、ピザ屋TONY’Sの頑固なオヤジさんの顔でしたね。最初は全然相手にしてもらえなかったけど、粘り強く頼み込んで教えてもらうことになりました。

ーアメリカンピザの本場で教わって、日本に持ち帰ったTONY’S PIZZAには、どういった特徴があるのでしょうか？

藤原さん：普通ピザは耳の部分が厚くて、そこにはチーズがかかっていないので、耳の部分は捨てちゃう人も多いと思いますが、TONY’Sでは生地の隅々までチーズをたっぷり乗せています。

それからチーズにもこだわりがあります。TONYから教わったチーズに近くなるように、オランダ産エダムチーズ、デンマーク産マリボーチーズ、ドイツ産のモッツァレラチーズを仕入れています。それぞれ新鮮な塊の状態で取り寄せ、削りたてをブレンドして盛り付けています。フレッシュなチーズを堪能してほしいので、うちにはタバスコを置いていません。ヨーロッパのチーズはもたれないから、80代90代のお客様でもピザをペロリと平らげてしまうんですよ。

あとは生地ですね。モチっとした食感にたどり着くまでたくさん研究を重ねました。オーダーを受けてから、自家製の生地をさらにこねなおして焼き上げています。ニューヨーク出身のお客様も来ますが、「本場のピザより美味しい」と言ってくださいます。

ーありがとうございます。最後に、今後TONY’S PIZZAをどんなお店にしていきたいか、展望や想いを伺えますでしょうか。

藤原さん：まず、ここで働いてくれる若い子を育てたいと思っていますよ。数年前から複数の留学生が働いてくれています。その中に韓国からの留学生もいるのですが、コロナの人員整理の関係で、本来就職する予定だった業界に行けなくなってしまって。とても真面目な子でぜひともうちの仕事をお願いしたいと思ったので、就業ビザの切り替え手続きなどを積極的にサポートしたこともありました。

そして、吉祥寺移転前の代々木店時代から足繫く通っている常連のお客様も多く、当時は学生だった子が、今はお父さんお母さんになって自分の子どもと来店する、なんてこともあるんです。私はいろんな人に助けられてここまでやってこれましたから、その分お客様にも従業員にも還元していきたいですね。

あとがき

お話を聞く中で印象的だったのは、藤原さんが「人に助けられてきた」と数多く口にしていたこと。それは、ケネディを追いかけ身一つで渡米したり、ピザ自体があまり浸透していない時代にニューヨークピザを始めたりするなど、前例のないことに果敢に挑むバイタリティーを持ち、前向きで朗らかな藤原さんの人柄が多くの人を魅了するからなのだと感じました。

TONY’S PIZZAの看板メニューである「ミックスピザ」を実食しましたが、藤原さんの言葉通り、端までチーズたっぷりなのに不思議と重たくなく、スルリと平らげてしまいました。みなさんも、アメリカへの熱い想いと食べる人への愛情が込められた絶品ピザを、味わってみてはいかがでしょうか。