自然の延長にある、誰でもふらりと立ち寄れるクラフトビアバー

JR立川駅から徒歩5分ほどの好立地に、そのお店はありました。店内がよく見える大きな窓が特徴の、クラフトビアバーです。

2020年3月にオープンした「坂道ブルイング」という名のそのお店は、イギリス出身のマシュー・ボイトンさんとアメリカ出身のダニエル・ベラミーさんがお二人で経営されています。国内・海外ともにさまざまな種類のクラフトビールが楽しめるアットホームなお店ですよ。
 こちらはブルワリーでもあり、自家醸造のクラフトビールを提供すべく現在準備中。タップルームからは、期待にあふれる醸造施設がホワイトボードの後ろに覗いていました。

お話を伺った方/マシューさん、ダニエルさん


 マシューさんはイギリス出身で、日本で暮らして16年ほど。日本で働こうと決めたのは、日本人の奥様とのご結婚がきっかけです。はじめは英会話教師として勤めていたそうですが、キャリアチェンジを考え、静岡の醸造所・Baird Breweryに入られたのだとか。その後、伝統的な酒造りを行う石川酒造にも勤め、独立しました。そして、この「坂道ブルイング」を作るに至ったのです。

ダニエルさんはアメリカ出身で、やはり日本にきて17~18年ほど。英会話教師として勤めたのち、趣味の長距離サイクリングを経て、サイクリング友達でもあるマシューさんとお店を経営することに決めました。長い旅行でさまざまな土地を訪れ、各地で飲むビールはやはり最高なのだそうです。

今回は、この立川の地からさまざまなクラフトビールを誰にでも楽しんでほしいと考えるマシューさん、ダニエルさんのお二人に話を伺ってきました。

タップの前での一枚。右ダニエルさん/左マシューさん(※マスクは撮影のために一時的に外しています)

―どうして、この立川の地でお店をやろうと思ったんですか?

もともと、中央線沿いのエリアに長く暮らしていました。だからこのあたりのことをよく知っていたのですが、立川にはたくさんのレストランや居酒屋はあるのに醸造所はないんですよね。だから、それがチャンスだと思いました。また、この立川の地は八王子や高尾、奥多摩などキャンプやサイクリングに人気の地へのアクセスがとてもいいんです。それも決め手になりましたね。

私とダニエルさんはもともとサイクリング友達でもあります。だから「坂道ブルイング」の「坂道」の意味のひとつは、ツーリングの表現でもあるんですよ。

―お店をやるうえでの、こだわりのポイントを教えてください。

先ほど言ったように、立川はアウトドアを楽しむためにとてもアクセスのいい地です。自然を楽しんだあとにビールを飲みに行けるのがいいところですね。だから、タップルームにも木材をたくさん取り入れて、お店の中でも自然の雰囲気を味わえるようにしています。

もうひとつの大事なポイントは、この店はクラフトビールを誰でも楽しめるところですね。実際にお店をオープンしてみてびっくりしたんですが、女性のお客様もとても多いんです。クラフトビールの楽しみ方が日本で広まりつつあるのもありますね。

お店のこだわりとして、入りやすい雰囲気とわかりやすいシステムを心がけているので、窓も大きくして、会計はシンプルに。ビールのサイズはワンサイズ。すべて400mlで、値段は一律880円。フードの持ち込みも自由です。

―お店をやっていくうえで、特に苦労されたことはありますか?

このお店は2020年の3月にオープンしました。コロナ禍の真っ最中ですね。そのため、緊急事態宣言が出て、一度は閉めなくてはなりませんでした。フードを扱っていないので、どうにもならなかったんです。そのあと、テイクアウト販売のための免許を取り、缶ビールを提供できるようにして再オープンしました。

そのため、今年からようやく思ったような形でのお店の営業ができるようになったんです。まだまだこれからですね。

テイクアウトができる缶のクラフトビール。ラベルが鮮やかでどれも魅力的だ。

―お店これからどうしていきたいか、どんなビールを作っていきたいか、ぜひ教えてください!

誰でも入りやすいお店作り、誰でも楽しめる場所を作っていきたいです。製造免許の申請が終わったところなので、許可が下りればついに自家醸造をはじめることができます。店内の大きな窓から、ビールを作っているところを見ながら飲めるようにしていきたいですね。

ビールの好みは人それぞれ違うので、いろいろなスタイルのビールを作っていこうと思います。それが、誰でも楽しめるクラフトビールを作りたいという気持ちにつながっています。

醸造施設での一枚(※マスクは撮影のために一時的に外しています)

ビールの紹介

坂道ブルイングには、現在タップが8タップあります。そのうちの4タップは坂道ブルイングが共同開発したオリジナルのものを、あとの2つは国内の醸造所、もう2つは海外の醸造所のものとしているそうです。


今回はその中でも、オリジナルのビールを2種類いただいてきました。

オニ公園

定番商品のひとつだそう。夏祭りをイメージした、ライトでドライな飲み口です。色も明るく、さっぱりしていて爽やかな苦味がありました。ですが、それも後を引かないのでとても軽やか。アルコール度数も5.5%と飲みやすいです。


フードの持ち込みが自由なので、同じく立川の「友誼食府」で焼き小籠包を買って持参しました。カリカリの生地と肉汁が、すっきりしたオニ公園ととても合っています。マシューさんからは「いいペアリングですね」とのお言葉をいただきました。


料理の提供をせず持ち込み制にしているのには、立川のさまざまなグルメを楽しんでほしいという理由もあるそうです。
ちなみに、ビールの名前の由来の「オニ公園」とは、「錦第二公園」という実際に立川にある公園の愛称から来ています。鬼の滑り台がなんとも個性的で、地元の皆さんに親しまれているようです。

Slam Dank


先ほどのオニ公園よりも少し濃い色合いで、とても美しいですね。こちらはコクがあり、DIPAなだけあって苦味もしっかりと感じます。ただ、そのぶん香りも華やかで、つまみがなくても楽しめてしまいます。アルコールも8.0%とやや高め、まったりと時間をかけて飲みたい味わいでした。

大きな窓から店の外をのんびりと眺めつつのビール。マシューさんとダニエルさんが英語で話しているのが聞こえ、店内は和やかな雰囲気です。ここならば、お仕事帰りに軽く一杯を楽しみたい人も、仲間と和気あいあいと飲みたいという人も満足することができるでしょう。


ナチュラルウッドを基調として落ち着いた店内で、ぜひ立川発のクラフトビールを皆さんに飲んでもらいたいです。今までビールを敬遠していたという人にも、さまざまな種類の中から「これは好きだ!」と思える一杯が見つかるのではないでしょうか。

店舗情報

店名
坂道ブルイング
住所
東京都立川市柴崎町2-6-5
最寄駅
立川駅
駐車場
なし
電話
非公開
コロナ禍への対応
3密回避、アルコール消毒
お店HP
https://www.sakamichibrewing.com/
グルメサイト掲載

インタビュアー

黒田侑
日本

 皆さん、はじめまして。東京都下在住のライター、黒田侑(くろだ ゆう)と申します。昔から食べることも作ることも大好きで、友達と珍しい外国料理を食べてまわったり、イタリアンレストランのキッチンで働いたりしてきました。  都心には多く見られる外国料理店ですが、今日は東京23区外のおいしいお店についてご紹介したいと思います。各国の雰囲気を味わいながら、楽しい時間を過ごすお手伝いができれば幸いです。